このお宅は建て替え前の家の材料の一部を解体時に取り外して保管しておき、新築工事に組み込んで再利用を図った家です。
[古い家の床板を切り取って、新築の家の床に再利用]
以前の家の応接室の床材。貴重なボーダーの寄木フロアーと一緒に切り取り、ワックスがけして再利用。
天井には前の家で使われていた桧のフローリング材を削り直し、階段も以前のムクの踏板を使わせてもらいました。
[古い建具、照明器具、家具も再利用]
扉の波型のガラスは今ではめずらしいもの。
細工がすばらしい欄間も再利用。家具や照明器具も修理して利用。
窓下収納の扉にも以前の材を切り取って鏡板として再活用。
キッチンは、以前にリフォームして比較的新しく、気に入られていました。そこで、既存のコの字型のキッチンの寸法に合わせて台所を設計して、以前のシステムキッチンをそのまま新しいプランに組込みました。
[和室は、ほとんど古材を再利用して構成]
和室の杉ムク板の天井材、網代天井、戸、紙障子、欄間にいたるまで全て以前の家にあったもの。
新しいのは畳と壁仕上げくらい。
見事な透かし彫りの欄間、紙障子も昔のもの。
[外構にも]
建物周囲の犬走りや庭に昔の家の屋根瓦をこば立てして埋め込み。
ご相談のあった建て主さんは、大きく立派なお屋敷にお一人で住んでいる方でした。生活はほんの一部の部屋を使っているだけ。午前中は雨戸を開けて回るだけで大仕事。老朽化も進み、修繕などの維持も大変なだけでなく、寒く、年齢とともに日常生活にも不便をかかえるようになってきました。
コンサルティングを進め、いろいろと検討された結果、古い家を解体してコンパクトに建て替え、住み慣れ、愛着のあるこの場所に住み続けることを決断されました。
そこで、建て替えにあたり、ご家族との思い出のあるかつての家にあった材料の一部を解体時に取り外し保管しておき、削り直しや塗装し直し、寸法をアレンジしたりしながら新築住宅の工事に組み込んでいきました。施工者さんと職人さん達の協力により、愛着のある材に囲まれた居心地のいい家ができ、暖かく快適に暮らしています。